デジタルイラストのトレス技術は問題か?

初音ミクで有名な絵師「ゆのみP」が∀ガンダムや有料素材サイトのサンプルを無断使用・トレス発覚 【堕ちた天使】:ニュー速VIPブログ(`・ω・´)
ニコニコ絵師「ゆのみP」が有料素材トレス問題でブログに謝罪文を掲載:ニュー速VIPブログ(`・ω・´)

問題点

・ネット上の画像、有料素材のサンプルを無断でトレスし、自己の作品として発表した事
 ⇒明確な盗作。著作権侵害による著作権法違反の罪(著作権法123条、119条1号)。告訴されれば3年以下の懲役、または300万円以下の罰金。
  ただし、著作権等の侵害は親告罪であり、素材の権利者からの告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪である(Wikipedia親告罪」参照)。
  ゆえに、外野がいくら騒いでも被害者から訴えられなければ、盗作したものは罪に問われないのは事実である。
  しかし、著作権法違反に抵触している事実は、被害者が気付かないケースも多い(特にネット上の画像の権利者などはほぼ間違いなく気付かないだろう)。
  それに、被害額が少なければ提訴する方がコストがかかる。
  また、剽窃に気付いた者がそれを公に発表する事には何も問題がない。
  よって、事実関係を明らかにし、社会的な制裁措置が取られる事に問題は一切ない(信用の失墜など)。
  事実ではない件についてしつこく風説を流布する事は、逆に訴えられ名誉棄損罪となる可能性があり、リスクを抱えている(こちらも親告罪)。
  また、最初に提示したコピペブログの管理人らも、事実関係が判明次第それをきちんと伝える事が筋であると考える。

  結論、剽窃の指摘を受けたものは、正当性があるならばそれを示し、それでもしつこい者は訴える。そして違法性があるのならば謝罪し、賠償(場合によって告訴)に応じればよいだけの話である。
  それ以上の論点はなく、それでも異を唱えるのは無意味であり、ただの個人的な感想に過ぎない。

問題ではない点

・トレスにより作品を作成した事。
 ⇒トレス自体は、単なる一技術でしかない。
  極論、100%トレスで描かれた作品でも、トレス元が正当に収集されたものなら全く問題ない。この点については明確にされるべきだろう。

推測される問題の背景

・基本的な画力の決定的な欠如
 ⇒画力がないままにたまたま一部で取り上げられてしまったため、作品を制作し続けるためにトレス技術に頼らざるを得なくなったと推察される。
  そういう意味では、この作者には同情する。一方で、プロ意識のかけらもない事については甘んじて批判を受け入れる必要があるだろう。
  以後、名義を変えて作品を世に発表し続ける事が十分考えられるが、少なくとも本件の事実関係を清算しなければそれは許されるべきではない。

・受け手が剽窃に対して無知覚、情報が多すぎて気付かない
 ⇒多少の違和感があるトレスばりばりの作品でも、喜んで受容する受け手のリテラシーの無さ、そして膨大な素材からトレスされた膨大な作品に権利者は気付かない。 
  逆に言えば、それを知っていて逆手にとった悪質な行為である。

「お詫び」から推察される事

この度は、私が過去制作いたしました制作物について、ご迷惑をおかけしておりますことを、お詫び申し上げます。
誠に申し訳ございません。

お詫び

・素材を無断で使用した可能性が極めて高い
 ⇒何についての謝罪か不明
  しかし、事実無根であれば、少なくとも「お詫び」にはならない。
  その場合は有料素材を正規に購入した証拠を提示し、批判を否定するからだ。

・事実を隠ぺいしようとしている
 ⇒上記のように、「可能性が極めて高い」、すなわち黒に限りなく近いグレーだが、事実であることを一切認めてはいない。
  ネット上で炎上しているため火消しの為に形式だけの謝罪はするが、この文章を根拠に告訴される要素を出さないようにしている。

それでこの人は、絵師なのか?

・トレスに頼りきり、他者の作品を盗作する人間は、絵を描くプロではなく、PCで既存のデザインを加工するオペレータである。もちろんアーティストではない。
 よって、この人物は絵描きなどとは称さず、「オペレータである」と自称・他称する事を推奨する。
 もちろん、オペレータにもそれ相応の技術が必要とされるため、それが卑下すべきだとは一切思わない。
 単純に、この人物を証するに妥当な名称がオペレータだと主張するのみである。

個人的な見解

・よく言われる批判だが、相手が実体であるのに対して、批判者が匿名性を保証されているため、行き過ぎると悪質な私刑になってしまう。
 (しかし匿名性が保証されているからこそ密告する事が可能である、というのは何もインターネットに限った事ではなく、匿名による有用性は否定できないだろう。
  無論それが匿名の個人ではなく不特定多数、となると上記の私刑という問題が現れるのもまた否定できない)
 ただし今回のケースは、謝罪しながらも事実は否定するという言動に及んでいるため、この「悪質な私刑である」という批判に辿り着く以前の状態にある。



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